(1)一般的な注意点
Agency Agreement と Distributorship Agreement との区別
Agent も Distributor も、日本語に訳すと「販売代理店」ですが、意味がまったく違います( Agent を「代理店」、 Distributor を「販売店」と訳し分ける人もいます)。
Agency Agreement のスキームでは、売主=本人( Principal )と顧客( Customer )との間で直接、売買契約が成立します。 したがって、商品の代金は顧客が売主に直接払うのが原則ですし、商品の引渡も売主から顧客にするのが原則です。実際の契約では、引渡しのため、あるいは代金の回収のため、間に代理店( Agent )が「手伝い」として入ることがありますが、原則形態は代理店( Agent )は顧客を本人に紹介するのみです。
代理店( Agent )は、顧客紹介の対価として、売主=本人( Principal )から成功報酬( Commission )を受け取ります。 Commission は、売買金額の一定パーセントであったり、定額であったりします。
これに対して、 Distributorship Agreement のスキームでは、売主=メーカー( Manufacturer )と販売代理店( Distributor )との間で第1の契約が成立し、販売代理店( Distributor )と顧客( Customer )との間で第2の契約が成立します。 売主と顧客との間には、直接の契約関係はありません。
したがって、たとえば、 Distributorship Agreement なのに Commission と題する規定があるとおかしいわけです。
Sales and Purchase Agreement と Distributorship Agreement との区別
また、売買契約( Sales and Purchase Agreement )と上記2つの契約、特に Distributorship Agreement との区別について説明します。
第一に、 Agency Agreement および Distributorship Agreement は継続的契約であり、したがって契約期間の定めが必ずあります。これに対して、売買契約は一回的契約の場合と継続的契約の場合とがあり、契約期間の定めが必ずあるとは限りません。 第二に、買主がエンドユーザーである場合は売買契約となります。しかし、売買契約の買主が必ずエンドユーザーというわけではありません。買主が転売を目的としている場合は、販売代理店契約と似ているように見えます。
しかし、販売代理店契約というのは、 Distributor がメーカーの特定の商品を特定の販売地域で販売し、マーケティングをし、顧客を勧誘するという義務をメーカーに対して負うものですから、単なる売買契約とは明確に区別されます。 |