合弁契約( Joint Venture Agreement )は、通常、合弁会社の設立を伴う場合をいい、そうでない場合は「業務提携契約」( Business Alliance Agreement )あるいは「戦略的提携契約」( Strategic Alliance Agreement )などといいます。
「株主間契約」( Shareholders Agreement )は合弁契約と同じものです。
合弁事業を立ち上げる場合、(1)合弁契約(株主間契約)、(2)合弁会社の定款、(3)合弁会社に対する(1株主からの)ライセンス契約(および技術援助契約)など、様々な書類の作成が必要になります。なお、日本法で「定款」と呼ぶ書類は、外国では Articles of Incorporation (基本定款)と Bylaws (付属定款)に分かれることがあります。
合弁契約を締結する場合、最も関心が払われるのは持ち株比率でしょう。よくあるのは、A社51%、B社49%といった比率です。この例では、たとえば取締役の人数を6人と定めた場合、会社法の原則からしますと、A社が6人全員を選任する権限を有します。A社が51%の取締役を、B社が49%の取締役を選任できるのではありません。
そこで、実際の合弁契約では、少数株主(上記の例ではB社)の保護のため、(1)少数株主も一定の人数の取締役を送り込むことができることとすること、(2)一定の重要事項の決定については、少数株主の選任した取締役の同意を含む取締役会決議を要するものとすること、(3)一定の重要事項の決定については、少数株主の同意(ないし株主間の同意)を要するものとすること、などの工夫がなされることがあります。ただし、(3)は要するに少数株主に「拒否権」を与えたことになり、合弁会社の運営に支障を来たす場合がありますので注意が必要です。
持ち株比率の変動を生じるような事由については、細かい規定が必要です。(1)株式の譲渡には取締役会の承認を要すること、(2)新株発行に際して、各株主は新株引受権( preemptive right )つまり持ち株比率を維持する権利を有すること、(3)A株主が持ち株を第三者に譲渡しようとする場合には、B株主にまず offer しなければならないこと(B株主が right of first refusal を有すること)などが基本となります。
A株主が持ち株の全部または一部(たとえば1000株)を第三者に譲渡しようとする場合に、B株主が、譲渡前の持ち株比率に応じて、同じ価格で当該第三者に譲渡する(たとえばB株主の持ち株比率が49%であれば、1000株のうちの490株をB株主の保有株とする)権利( tag along right )を有するという条項を設ける場合もあります。
合弁を解消する場合の規定というのも、かなり重要です。株主間の意見が衝突し、どうしても解決しない場合(デッドロックといいます)、一方株主から見て、基本的に(1)自社の株式を相手方に全部売る、(2)相手方の株式を自社が全部買い取る、(3)合弁会社を解散する、の3通りの解決方法しかありません。一方の当事者が株式の単価を決定し、他方の当事者が、全部買い取るか全部売却するかのいずれかを選択することができるという条項(ロシアン・ルーレット条項)を設ける場合もあります。
合弁会社の解散については、合弁会社が海外で雇用を生じているような場合には、現地の規制により、解散が困難であることもあります(変なたとえですが、結婚よりも離婚の方が大変であることと同様です)。
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